2017年9月22日金曜日

第五回文学フリマ大阪

9月18日、「第五回文学フリマ大阪」に参加・出店した。
文フリというものに出店するのはこれで五回目である。大阪には第三回から参加。あと京都に一回、東京に一回。五回の経験からいろいろ思うところがあったが、それは後にして、当日ゲットしたものの中から二冊ご紹介。

まず、短歌から「ぱらぷりゅい」。12人の女性歌人による一回だけの冊子だという。メンバーは岩尾淳子・江戸雪・大森静佳・尾崎まゆみ・河野美砂子・沙羅みなみ・中津昌子・野田かおり・前田康子・松城ゆき・やすたけまり・山下泉。
代表の尾崎まゆみはこんなふうに書いている。

「一冊限りの特別な冊子を、いつも歌会などで会う人たちと作りたいと思ったのは、去年初めて行った大阪文学フリマで自作の冊子を売っている人たちが楽しそうだったから」

「女性に限定」「関西」の二つの括りがある。
各12首の短歌のほか参加者の第一歌集の書評を並べるという企画である。あと、歌会の記録。パラプリュイはフランス語で雨傘。日傘はパラソル。ちなみに漢字の「傘」の画数は十二画。12で徹底している。

女には関係のない場があるとやさしい眉のむなしい声で        江戸雪
ひとがひとに溺れることの、息継ぎのたびに海星を握り潰してしまう  大森静佳
鯉川筋をあるく少女のまなざしのまぶし 再度山の濃緑        尾崎まゆみ
ざんねんな探偵としてわれはわれに雇われていたり今日も推理す    山下泉

そういえば山下泉『光の引用』の歌評会に出席したことを思い出す。

二冊目は『カラマーゾフの犬』。ドストエフスキー五大長編アンソロジーとあるが、ドストエフスキーの二次制作なのだろう。『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』『白痴』『未成年』のそれぞれに漫画と小説や短歌・俳句が付く。企画・編集はmerongreeという人。メロングリーと読むのだろう。

ドストエフスキーはもういない。だから、わたしはゆるされる。

ということで、「全国に数人いるドストエフスキークラスタが創作した『自分が見たいドストエフスキー(自分が描かなきゃ出ない新刊)』を収録したのが本誌です」とある。

以上、二冊を紹介したのは内容もおもしろかったが、文フリに向けての制作の仕方にも刺激になるところがあったからだ。
私は今回「川柳サイドSpiral Wave」の名で出店したのだが、川柳から他の出店はなかった。大阪では昨年・一昨年も同じようなものだったが、「川柳界から唯一の出店」と強がってみても、川柳の存在感の薄さは覆うべくもない。特に感じたのは、かたまりとして川柳から複数の出店がないと、人も集まらないし本も売れないということである。
文フリでは川柳本が売れないから、直接川柳大会に行って句集を売る方がよいという考え方がある。大会・句会に集まっているのは川柳人だから、その方が効率がよいのは事実である。しかし、内輪の人間のなかでやりとりしていても、少しも読者の範囲は広がらないし、会場の片隅を借りて本を売るという販売形態もあまり元気のでるものではない。
いまのところ文フリには出店すること自体に意義があると思って参加しているが、何かしら新しい出店形態や企画を考えないといけないと思った。

今回、文フリ大阪のために用意したのは合同句集『川柳サイドSpiral Wave』第二巻である。
これは今年一月の文フリ京都で販売した第一巻に続くもので、榊陽子が抜けて樹萄らきと酒井かがりが新たに加わっている。各30句収録。

強大な堀北真希が降りて来る           川合大祐
小童め傷つかぬよう必死だな           樹萄らき
お、おにぎりの、の、のりがこわいんだなプツン  飯島章友
握らないでくださいそれは渦です         柳本々々
Hey Siri , What did you do this time ?     兵頭全郎
モハでキハでキンコンカン兄貴          酒井かがり
そうだなあ危険な菊をあげようか         小池正博

またフリーペーパーとして「THANATOS」3号(発行 小池正博・八上桐子)を無料配布した。
石部明の川柳を振りかえるもので、今回は1996年~2002年の作品を50句掲載している。

入口のすぐ真後ろがもう出口      石部明
際限もなく砂がある砂遊び

石部明語録と「川柳人はどのようにして自ら納得できる一句にたどりつくのだろうか」「石部明に『遊魔系』上梓を決意させたものは何だろう」の二本の短文が付く。葉ね文庫にも置いてもらっているので、ご希望の方はどうぞ。今年は石部明没後五年になるので、石部の作品が改めて読まれる機会になれば嬉しい。

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