2017年1月20日金曜日

文フリ京都をひかえて

来たる1月22日に「文学フリマ京都」が開催される。すでに東京では23回、大阪では4回開催されている文フリだが、京都では初めての開催になる。
川柳人にとって「文フリ」そのものがあまり認知されていない。したがって、川柳から出店するグループもほとんどない。私は今回、「川柳サイド Spiral Wave」の名で出店するが、文フリのカタログには「川柳カード」の名で掲載されている。申し込み時にはその名前だったが、新しく冊子を作ったので、会場のブースでは「川柳サイド Spiral Wave」で表示することになる。川柳にご関心のある方々は目にとめていただければ幸いである。文フリは小説、評論、ノンフィクション、詩歌などのジャンル別に出店される。詩歌の短歌・俳句・川柳のうち、当店は「川柳サイド」からの発信というつもりである。
冊子「川柳サイド Spiral Wave」には、飯島章友・川合大祐・小池正博・榊陽子・兵頭全郎・柳本々々の六人が参加している。それぞれ30句ずつ収録、1ページに3句、ひとり10ページというかたち。一人一句ずつ紹介しておく。

殴ると光るんです蹴ると燃えるんです   柳本々々「そういえば愛している」
税金で明るい暮らしトルメキア      川合大祐「インブリード」
さあ我の虫酸を君に与えよう       榊陽子「ユイイツムニ」
括弧つき無呼吸だから取る括弧      飯島章友「徘徊ソクラテス」
吊るされて一尾一肝ゆるす海       兵頭全郎「天使降る」
肉食であれ草食であれぷよぷよ      小池正博「人体は樹に、樹は人体に」

川合は3句セットの連作で、掲出句は「風の谷のナウシカ」による。先日、テレビで放送されていたのを私も改めて見た。兵頭も3句セットで趣向を凝らしている。会場で手にとってご覧いただきたい。95ページ、定価500円。
この六人の作品のほかに、「現代川柳百人一句」(小池正博・選出)を付けている。一昨年の「川柳フリマ」で紹介したものの改訂版で、葵徳三から渡辺蓮夫まで作者アイウエオ順の配列。現代川柳にどんな作品があるのか全体を見渡すことが困難だという声をよく聞くので、発信の第一歩として選出した。今後、「新興川柳百句」とか「自由律川柳百句」とか、さまざまなテーマで選出してゆきたいと思っている。

川柳にとって文フリはどのような意味をもつだろうか。
瀬戸夏子は角川「短歌」1月号の時評で文フリについて書いていたが、歌人にとって文フリは作品発信の場として一定の役割を果たしているようだ。それに比べて、川柳人にとってこのイベントはほとんど関心をもたれていない。句集・雑誌を売る場としては、川柳の大会や句会に本を持っていった方が効率的だと考えられている。そこに集まるのはすべて川柳人であるからだ。けれども、それでは川柳作品を発信する範囲が極めて限定的なものになってしまう。特に若い世代に対して川柳作品はまったく届いていない。既成の川柳人という限定された読者ではなく、川柳に関心があっても作品に触れる機会がこれまでなかった未知の読者に私たちの作品を読んでほしいと思っている。
今年は「文フリ京都」のほか5月の「文フリ東京」、9月の「文フリ大阪」の三か所に参加する。文フリが川柳発信の場としてどれだけ機能するか分からないが、今後出店する川柳グループが増え、蛸壺型の閉鎖的な川柳界が外部の風に触れる機会となれば幸いである。

昨年末には、私の川柳の師である墨作二郎が亡くなり、現代川柳のひとつの時代が終わった感がある。3月30日には堺市で「墨作二郎を偲ぶ会」が予定されている。作二郎についてはいつか改めて触れることにしたい。

あと、川柳誌「触光」で募集している「第7回高田寄生木賞」の締切が1月31日に迫っている。今回の募集は「川柳に関する論文・エッセイ」である。文芸において実作と評論は車の両輪であるはずなのに、川柳では評論に見るべきものが少ない。この賞は川柳では珍しい評論賞となるので、みなさん応募していただきたい。川柳の活性化につながることと思う。

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