2016年6月3日金曜日

川柳はグローバル

「熊本日日新聞」の読者文芸のページに田口麦彦が「川柳はグローバル」を連載している。田口は震災のあった熊本市在住の川柳人である。連載19回目の5月23日には、冒頭で次の句が引用されている。

テレビはどれも地震の話 熊本城崩れ   墨作二郎

「現代川柳・点鐘」176号から。墨作二郎は阪神大震災の際にも「春を待つ鬼を 瓦礫に探さねば」をはじめとする震災句を詠んでいる。
また、田口の川柳の原点にあるのは昭和28年6月の熊本大水害である。そのとき田口はこんな句を詠んだ。

水引いて誰を憎もう泥流す   田口麦彦

熊本日日新聞に田口麦彦は次のように書いている。
「こちら熊本は、いまもまだ揺れ続く。清正公さんの頑丈な石垣も崩れ、阿蘇大橋も消えてなくなった。それでもすこしずつライフラインも復活。温かい全国のボランティアの人たちに助けられている。ありがとう」「生きて生き抜いて、その証しの句を作ろう」

関西俳句会「ふらここ」の作品集が発行された。
上田拓史の書いている文章によると、「ふらここ」のはじまりは次のようなことだった。

黒岩徳将「今年から、本気で俳句やありたいんです。拓史さんもやりましょう」
上田拓史「関西にも学生だけで集まる団体があってもいいのにね、俳句甲子園出身者の受け皿みたいなのがさ」
黒岩「だったら僕たちでやりましょう!」

「ふらここ」は大学ごとの俳句サークルではなくて、関西の若手俳人のコミュニティという位置づけのようだ。作品集から何句か紹介する。

ぼんやりとカナブンになってゆく孤独    山本たくや
心臓はあげるよ月を僕にくれ        寺田人
どうせまた降るから零余子飯どうぞ     仮屋賢一
花曇り世を変えるには狭き庭        野住朋可
また誰か倒れたそうで冷奴         栢原悠樹
湖に溶け明るさだけとなる花火       下楠絵里

「触光」47号に第6回高田寄生木賞が発表されている。大賞は次の作品。

スリッパが全部こっちを向いている   こうだひでお

作者は京都の川柳人で「川柳 凛」の同人。
詳細は「触光」誌をご覧いただきたいが、私がおもしろいと思った句を引用しておく。

Wはそして海溝まで沈む        猫田千恵子
二足歩行余った手には銃がある     落合洋人
はっとして魚の形考える        星井五郎
そのことに触れずりんごを剥いている  嶋澤喜八郎
おとうとの三割はこうそくどうろ    柳本々々
サ・カモト・ド・リ・ヨーマ否定食   中西号
ゴーヤのつぶつぶになったはらわた語  森田律子

次回の「第7回高田寄生木賞」は作品ではなくて、川柳に関する論文・エッセイを募集するという。その趣旨は次のように書かれている。
「現在、川柳界では多数の作品賞はあるが、論文や文章の賞はほとんどみられない。このままだと量的に作品は増えても、その作品の検証や作家の論評がなされなければ、文芸として質的に低下するのではないかと思った。ささやかな一灯ではあるが、皆様のご協力を乞うものである」
川柳の評論賞!思い切ったことをするものだ。締め切りは2017年1月末。未発表、4000字以内。送り先は野沢省悟まで。
ちょっとたのしみである。

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