2015年7月10日金曜日

川柳の句会と大会

6月27日(土)、「川柳二七会」六月句会に参加した。
「川柳二七会」は昭和34年7月27日に設立。27日は芸人の楽日で集まりやすいので、岸本水府を会長に芸能人・作家・学者などが参加した。水府没後、会長は松本橘次、深尾吉則、牧浦完次と変って、現会長は森茂俊。
今回は「森中恵美子句碑拝見吟行句会」ということで、阪急池田駅の託明寺に集合。いつもは道頓堀の飲食店で句会を行っているようだが、平成27年にちなんで規模を広げて吟行会になったものらしい。託明寺の先代住職は「川柳五月山」の会員で、境内に森中恵美子の句碑が建立されている。句碑を拝見したあと法話を聞き、池田商工会議所に移動。そこで昼食と句会を行う。参加者97名の盛会である。投句は一枚の投句用紙に三句連記で、そのうち一句は必ず取られるから、没句なしの博愛主義である。事前投句(森茂俊選)「うれしい」(新家完司選)、「本物」(森中恵美子選)。
「川柳二七会」7月号(671号)に同誌昭和37年7月号の作品が掲載されている。兼題は「人相」。

人相の悪い社長という名刺     喜代三
人相に似合わずきつい値切りよう  堀小美陽
人相も手相もよくてなまけ者    藤原せいけん
手配写真たまに人相のよい男    安部宗一郎

藤原せいけん(1902~1993)は大阪の画家。一時期の「番傘」の表紙を書いたが、川柳人でもあった。文楽ファンにとっては朝日座時代の文楽のプログラムの表紙絵でおなじみだろう。
続いて五月句会の作品から、兼題は「安心」

安心を売ってる店と書いてある   田中育子
安心と首相言うから胸騒ぎ     八木勲
居酒屋のいつもの席に居る安堵   楠本晃朗
手品師のような財布と暮らしてる  美馬りゅうこ
揺れる星こころやすまる刻がない  稲葉澄江
阿と吽の呼吸の中にいる安堵    牧浦完次

「水府雑感」のコーナーがあって、水府との一問一答(昭和57年5月号)が再掲されている。

【問】川柳にも季語は許されるのですか。
【答】許すも許さぬもありません。人間として感じたものなら何でもよいわけです。大原へ行ったとき残雪がありましたが、春雪という季語をつかってよい川柳をつくった方がありました。しかし私だけの意見ですが川柳は人間生活をよむところに、花鳥諷詠の俳句とちがった価値があるのですから。その上に川柳家のものする季感はほとんど天保調で月並みです。人間諷詠を大に誇ってわき見をふらず進んだ方がよろしい。

「川柳二七会」のバックナンバーは大阪市立中央図書館の雑誌コーナーで読むことができる。

7月5日(日)、「第66回玉野市民川柳大会」に参加。
途中の車窓から眺める水田の青さは、毎年同じ風景ではあるものの、それぞれの年によって感じ方が異なる。私もそれなりの年月を重ねてきたのだ。
玉野は男女共選が呼び物で、「創」(筒井祥文・本多洋子選)「挽歌」(徳永政二・吉松澄子選)「魔女」(小島蘭幸・森田律子選)「煽る」(桑原伸吉・柴田夕起子選)、これに席題(前田一石選)が付く。
投句をすませたあと、いつも行くお好み焼き屋へ。会場のサンライフ玉野の周辺にはお好み焼き屋が二件あって、もう一軒はクーラーも効いて快適なのだが、なぜか冷房の効かない暑苦しい店の方に行くことになっている。そこで焼きそばとお好み焼きをあてにビールを飲み、大騒ぎをするのである。きっと店の人には嫌がられているだろうが、年に一回のことなので次にゆくときには時効になっているだろう。
今回玉野へ行ったのは、石部明の初期のことを調べ直してみたいという目的もあった。前田一石から「ますかっと」「川柳塾」のバックナンバーを借りることができた。何より「おかやまの風・6」(昭和63年10月30日)の記録が参考になった。過去の川柳誌を見ていると、その時代の息吹が伝わってくる。この日の玉野に出席している川柳人たちの若き日の写真なども掲載されている。いま目に見えている光景には、そこに至るまでの時間の経過があったことがわかる。
大会終了後、岡山駅前の居酒屋で打ち上げをしたが、そんなことばかり書いていても仕方がない。大会の作品については発表誌がでたときに改めて紹介したい。

第三回川柳カード大会が9月12日に大阪・上本町の「たかつガーデン」で開催される。
兼題「力」の選者を中山奈々に依頼している。中山は関西で活躍している若手俳人のひとりである。
「里」5月号に中山の「アルコールスコール脳が出ぬやうに」20句を発表しているので、紹介しておきたい。

吐きやすき便器なりけり桜桃忌    中山奈々
気がでかくなつてこの世に蟇
ががんぼや酔へば厠の壁殴る
箱庭の笑ひ上戸と呑んでをり
酔うてをり部屋中の紙魚に嫌はれ
百合の香の強き仏間に二日酔

編集長が仲寒蟬から中山奈々へスイッチした。掲出の作品は編集長就任記念特別作品ということである。

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