2010年8月6日金曜日

石部明の軌跡

「バックストローク」31号は「第三回BSおかやま川柳大会」の特集号である。2008年に始まったこの大会も今年4月で3回目を迎えたが、大会の呼び物は石部明のトーク。そしてゲスト選者とバックストローク同人による共選である。今回は石田柊馬と俳人の佐藤文香との組合せが話題になった。佐藤文香の選評に曰く、「もっと感」のある作品、「面白いでしょ?」と言っていない作品、「社会に貢献しない」作品を選んだ…と。賛否はあるかも知れないが、ユニークな基準である。
4月10日の大会がすんで4カ月が経過して発表誌が発行されたが、現時点から振り返って大会のことを思い出してみることは参加した個々の川柳人にとって意味あることだろう。また、参加できなかった川柳人にとっては、大会の記録によっておおよその雰囲気を知ることができる。発表誌の役割とはそういうものだろう。

◇個人史と現代川柳史
大会第一部「石部明を三枚おろし」は小池正博・樋口由紀子の二人のインタビュアーが石部明の話を聞くという企画である。石部のトークには定評があり、放っておいても話は面白くなるが、聞き手の小池には年代順に進めていこうという意図があって、「ますかっと」「こめの木グループ」「岡山の風・6」「ふあうすと」などについて丹念に質問している。
川柳人にはそれぞれの個人史があるが、それが大きな意味では現代川柳史とつながっている。特に、現代川柳の流れの中心にいる石部のような川柳人の軌跡は、個人史と現代川柳史をともに語ることによってはじめて浮き彫りになるだろう。
「川柳で大嘘を書いてみたい」という石部の発言が流布しているが、それがどういう文脈で語られたのかもよくわかる。
大会の選者だった石田柊馬が選を終えてから途中で第一部に参加し、発言していることも、石部本人のトークとは別の視点を入れる意味でも興味深い。

◇時実新子
「川柳展望」「川柳大学」時代のことは、樋口由紀子が聞き手になって話を進めている。
「革新の時実新子」という石部の発言が新子を怒らせ、口をきいてもらえなくなったが、「火の木賞」授賞式では「長い間よく辛抱してくれましたね」と新子から声をかけられたことなど、エピソードが披露されている。
「伝統と革新」という枠組みにまだ川柳人がとらわれていたころから、石部明にはそういう図式は無効であるという認識があったが、それがどこからきているのかが何となくわかる。
新子が亡くなったあと、樋口由紀子が「MANO」に新子論を書いているが、石部の現在の視点からのまとまった新子論を読んでみたい気がする。

◇ゼロ年代川柳のうねり
「MANO」創刊から『現代川柳の精鋭たち』『遊魔系』「バックストローク」の創刊、「セレクション柳人」の発刊と、現代川柳は動いてきた。川柳の「いま・ここ」を語るのに石部明の存在は欠かせない。トークの最後では注目している川柳人の名を挙げているが、石部自身もさらに前進していく気合充分である。『遊魔系』以後の作品をまとめた第三句集の発行を待望しておきたい。

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